火曜日の夜の話

郵便受けから夕刊を取り出したら郵便受けが大破した。そのことを考えながら晩ごはんを食べたら眠たくなったので、30分だけ眠ってから郵便受けの修理と洗い物をしようと思い、眠った。まだ8時くらいだった。

 

しかし、同居人の呼ぶ声で起きたときにはもう11時になっていた。ゴキブリが出たから起こしたそうだ。カウンターの上で這い回るそれはけっして小さくなかった。もちろんそれを目にした僕も足がすくみ、ただただ悲鳴をあげるだけだった。ゴキブリを前に悲鳴をあげる成人男性二人。二人ともそれの半径5メートル以内には決して入ることができなかった。

 

仕方がないので、すでに眠っていたもうひとりの同居人を大声で起こした。彼はなんでもないかのように新聞紙でそれを捕まえ、窓の外に放り投げた。そうしてまた自室へと戻っていった。

 

ひと段落し、同居人とたばこを吸っていると、彼は言った。「もうあの子からは一生離れられない」それはそれはとてもかわいい台詞で、この家は最高だ、と思った。

 

その後洗い物が放置されていたことに苦言を呈されたりしたものの、30分寝るつもりが3時間眠ってしまったことや、ゴキブリが家に出たことや、郵便受けが壊れたことなどのショックはすでに寝起きのぼんやりとした頭で処理できる容量を超えていたので、ぼんやりと返事をするだけだった。

 

洗い物はそのまま次の日まで放置され、郵便受けも修理されなかった。2時過ぎまで起きていて、たばこが5本減った。