『LEGO®ムービー』が傑作すぎる件について

※ネタバレあり

 

 

すべてが素晴らしい。この作品は絶対に観るべきだ。

 

簡単な物語の説明。

悪役たるおしごと大王に対し、平凡な男が戦いを挑むというものである。

悪役の説明からしよう。悪役は、おしごと大王という男である。彼はこの世界を支配している。そして、人々が暮らすためのマニュアルを作り、また、テレビ番組や曲もすべてを決めているのである。

そして、この話の主人公は平凡な作業員だ。本当に特徴のない顔、特徴のない生活、特徴のない性格である。この主人公があることをきっかけに世界を救う人物だと思われるのだ。そして、この世界の地下勢力とともにおしごと大王と戦ってゆく。

 

 

 

この話の何が面白いのか。

 

まず一つは、小さい頃レゴで遊びながら思い描いたようなアクションが、予想以上の迫力で描かれていることだ。これは本当にただ観てくれというしかないのだけど、

「そうそう、小さい頃はこういうことを考えながらレゴで遊んでいたんだよ!」

と言うようなものとなっている。それが映画館の巨大スクリーンで展開されるのだ。

 

もう一つ、小ネタが非常に多い。この映画にはバットマンをはじめとして、非常に多くのキャラクターが登場し、それだけでもニヤリとしてしまうのであるが、これらのキャラクターが一同に会する時がある。このとき、芸術家・ミケランジェロの隣にティーンエイジ・ミュータント・ニンジャ・タートルズミケランジェロがいたりするのだ。このように、思わずニヤリとする小ネタが随所に仕込まれている。

 

さらには、この物語を通じて、創作とは?クリエイティビティとは?などの問題を考えさせられる所も大きな魅力だろう。

 

また、これは人によって好みが分かれるだろうが、物語全体のテンポの良さ、ノリである。まるで『TED』を思い出させるようなアメリカのコメディーのテンポで物語が進む。『TED』を観て、面白かったと感じた人はそれだけでも観る価値があるのではないか。

 

このように、いくつもの魅力があるのだが、最大の魅力は物語の構造にある。

 

ひとつ、おしごと大王の目的は完全なレゴの世界を作ることなのだ。そのためにスパボンという武器を使おうとする。これ、実は接着剤である。これで他のレゴを固めて、完全なレゴの世界を作ろうとしている。

これのミソは、おしごと大王自身がレゴの中のキャラクターであることだ。そのメタ性は、なかなか他の作品にはないユニークさを持っている。

 

ふたつ、おしごと大王はこの世界を完全なものにするために、マニュアルを配っている。また、曲やテレビ番組まで作っているのだ。そして、主人公も最初はそのマニュアルに従うだけの人間だ。主人公たちの一団は、この支配からの解放を求める勢力でもある。これはジョージ・オーウェルの『1984年』を何となく思わせる。

 

そして最後。物語終盤、この映画はレゴの世界を一度離れ、人間世界の話となる。

ここで二人の人物が登場するのであるが、一人は子供、もう一人はその父親である。

 

ここで明らかになるのは、これまで展開されてきた物語はある子供が考えた物語だったということだ。

そして、その父親はレゴマニアとでもいうような人物で、自分の部屋に他人には触らせないようにレゴの街を作り上げている。子供はそこに忍び込んで、考えた物語を展開するのだ。父親のレゴの街に、多くのキャラクターを配置して。

 

そのことに激怒した父親は、なんと子供の配置したキャラクターやレゴを壊し、接着剤でもとの街を固定しようとする。

 

ここで、現実世界とレゴの世界は完全にリンクするのだ。つまり、おしごと大王とは父親であり、主人公は子供なのである。子供がおそらく才能豊かでない、平凡な子供であることもここで何となく察しがつく。

 

そして、このリンクしたふたつの世界を行き来しながらおしごと大王のもくろみを頓挫させることに成功し、物語は終わる。これはもちろん、現実世界の子供が父親を倒すことにも成功したということだ。

平凡な男が世界を救う。このプロットはいわゆる「セカイ系」を何となく思わせるものでもあった。

 

平凡な子供が作る、壮大な物語。

 

子供向けに思わせながら、完全に大人に向けた作品である。もちろん、子供が観ても十分に楽しめるはずだ。